歌詞の視覚化




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PVなどで映像を視覚化する方法としては、多分いくつかのアプローチがあるような気がしていて、一つは以前音と映像の関係を巡る12本 (1)(2)で紹介したような、音色やリズムといった音そのものの構造に注目して、「音そのものを視覚化する」というのがある。これがもう一段階具体的になっていくと、「歌詞を視覚化する」というアプローチが見えてくる。歌詞の内容を再演するようなドラマ仕立てのPVを良くみかけるけど、あれも「歌詞を視覚化する」というアプローチでつくられたものだよね。今回紹介するいくつかの映像は、そういった歌詞=ドラマを再演する、というものではなくて、歌詞を単語や文字まで還元して、映像化してみるという、ちょっとかわった視点でつくられている。

Distorted Minds feat. Juice Aleem / Hexstatic
Dir. Hexstatic

音と映像の関係を巡る〜でもPVを紹介したHEXSTATICの作品。ラップのリリックを文字や画像におきかえている。文句なしにカッコイイ。Googleイメージ検索がでてきてから、こういう事がやりやすくなってきている所があるかも。(Country Stereotypesていうイメージ検索を利用して各国のステレオタイプを探るっていう企画があったけど、これも同じ視点のような気がするな)この人たちは単純に音と映像を同期させる、というだけでなくて、かなり本質的な部分で音と映像の関連を模索しているなあ、素晴らしい。


Heart Made Of Sound / Softlights
Dir.Softlights

日常にあるものを使って歌詞を構築している。色鮮やかなとっても可愛いPV。例えば、"spring"という単語をバネつくっていたりして、遊び心も楽しい。Stephan SagmeisterのTrying to look good limits my lifeと呼ばれる一連の作品がインスピレーションになってる気がする。


Sleeping Beauty / funkstorung
Dir.MK12

牧歌的な電車からの風景に歌詞が浮かぶ。歌詞を視覚化するっていうアイデアをそのまま、っていうむき出しの感覚ではなくて、ビジュアルとして完成度がすごく高い。綺麗。こういう空に何かういてる映像って綺麗だよね、ということでそのへんをまとめたのがこの記事:浮遊する物体


White & Nerdy / Al Yankovic
Dir. Al Yankovic

パロディの王様、Al Yankovicの作品。ギャングスタラップのフォーマットでオタク自慢が延々続くというもの。(日本でやるとすれば「東京生まれ秋葉原育ちオタクな奴らだいたい友達」みたいなもんすかね)歌詞の内容をいちいち映像化していて面白い。高密度。膨大なパロディの元ネタも含めて、Wikipediaに異様に詳細な解説があるので、詳しくはこちらを参照:White & Nerdy


メローメロー / 口ロロ
Dir. K.K

ワラッテイイトモ、の作者が監督した口ロロのPV。歌詞を1文字づつ分解して、「あ」〜「ん」まで別に撮影した映像で再構築。一つの音にたいして一つの文字がわりあて可能な日本語だからできるやり方。(そういえば、以前ロボットボイスのたのしみの記事で少し書いた、合成音声でラップエンジンをつくるってアイデアは、ベースにあるものはこの作品と似てるかも)


La Tour de Pise / Jean Francois Coen
Dir. Michel Gondry

Michel Gondry御大の昔の作品。街の看板と歌詞をシンクロさせている。ちょっと前に流行ったSpell with flickerは同じ発想かも。メランコリックな雰囲気もあるし、さすが完成度が高い。

ひとまず思いつくものをザッとリストしてみたけど、いろいろ見てみると結構歌詞を映像化するってアプローチは多くて面白い。他にも同じアプローチのものがあったら教えてくださいませ。


ダラっとまとめて見たい方はこちら:DARAOでまとめて見る


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音と映像の関係を巡る12本 (1)
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