SLN3DEXPO Vol.2 2.5次元アニメの技法




sln3dexpo2.jpg

全四回(になる予定)のSLN3DEXPO第二回は、第一回の「2次元画像から3次元画像を生成する技術」に引き続き、2次元画像を厳密に3次元画像に変換するのではなく、擬似的に3次元に見せる技術についてまとめてみた。

ちょっと前に話題になったモーションポートレートをはじめ、疑似3D、あるいは2.5次元表現ともいうべき、ちょっと不思議な感じのする表現が気になってる。この表現の面白いところは、実写画像に奥行きをあたえるという側面がありながら、元々2次元の、例えばアニメの絵なんかにも、違和感なく立体感を持たせることができること。今までアニメを三次元かしようと考えれば、キャラクターを3Dモデリングして、トゥーンシェーディングでアニメっぽくレンダリングするというのが常套手段だったのかもしれないけど、まだまだアニメ(この場合日本のアニメとかを指してる。PIXARのアニメなんかは系譜的にもまた別のものと考えてる)のデフォルメされた動きを再現するのは難しそう。(これはやっぱり人が1コマ1コマ描いてることによる「ゆらぎ」が再現できないからだと思う)それと、こっちの記事でも書いたけれど、人の動きなんかは、リアルな方向にいっても、なかなか不気味の谷を超える事はできてない印象。

■モーションポートレート

mp_sample.jpg

モーションポートレートは、写真から自動的に3次元モデルを生成して顔アニメーションを自動的に作り出すことが出来る技術。もともとソニーからスピンアウトした技術で、(もしかしたらそれもあってか)ソニーのウォークマンのRECYOUというキャンペーンで大々的に採用されて話題になったりも。PSPのゲームで採用されたという涼宮ハルヒのサンプルも結構すごい。

おそらく原理的には顔の目、鼻、口といった特異点を中心に、見る角度をかえた場合の画像のゆがみを数値としてもっていて...というようなやり方のような気がするけど、詳しくは謎。以前fladdictのなかの人が逆アセンブリしようとしてたけど、やっぱりブラックボックスはブラックボックスのままの様子...

最近ではヒゲチェンというサイトで自分の顔にヒゲを合成して遊べたりするサイトもでてきた。多分近いうちにメガネ屋が似たようなことやりそうなヨカーン。


■2.5次元アニメ

モーションポートレートともまた違うんだけど、ニュアンスとして少し似ている表現。多分板ポリに画像をはりつけて動かすことで角度による微妙な画像のゆがみとかを3Dのほうで保管しちゃえっていうやり方。

多分この映像はshadeで人形の板ポリに初音ミクの絵をテクスチャとして貼付けて、人形劇みたいな感じでアニメーションさせてるのかな。結構おもしろい動きになってる。そういえばパラッパラッパーってペラペラの板ポリに絵がはりつけてあって、こんな感じだったような気がするよ。

第三回のWeb3Dの回でも取り上げるけど、PICTAPS
pictaps.jpg

も動きの表現部分では同じことやっているのかな。

パーツの動かしで擬似的に立体的に見せる方法だとスーパーロボット対戦シリーズの表現が面白い。

スーパーロボット対戦戦闘シーン

youtubeの画質だとわかりにくくなってしまっているけど、ロボットの絵はドット絵でかかれていて、ドットで構成された角パーツが拡大縮小&回転運動をすることによって、かなり立体的に見せている。スーパーファミコンのグラフィック表現とかでよく見られた手法を演出面で成熟させながら、今でもずっとやってるんだろう。

あと、びっくりしたのは、Tinklebell(18禁!)という同人ゲームメーカーの作品が、かなりすごいレベルで疑似3D的な表現をやってる。サイトでサンプルのムービーがダウンロードできるので、えげつない表現が平気な方は(周りの目を気にしながら)見てみて欲しい。結構すごい。

tnklbl.jpg

2.5EXDという技術名がついてるけど、実際どうやっているんだろう。アニメーション自体は原画をパーツにバラして動かしてるっぽいんだけど、かなり立体的に見える。かといって3Dでモデリングしてるかというと、どうも違うっぽい。しかも絵がシェーダーっぽい質感というよりも、ペインターっぽい質感というか、手塗りの質感をとどめている。上記のモーションポートレートに近い技術かもしれない。

以前こっちの記事で紹介したときは、コメント欄で3Dのお仕事をされている方がコメントをくださって、疑似3D表現の部分と、シェーディングの変化を伴う部分とかは3Dアニメーションの連番素材を組み合わせているんじゃないかと考察されていた。確かに胸の動きとか、特に注意が向く部分はそういう風につくっているのかもしれない。(全然脱線するけど、胸の動きとかでいうとこちらの記事がおもしろかったよ!これぞまさにerogeek!)

こっちの記事でも似たようなことを少し書いたけど、今後二次元画像のリソースをつかっていかに面白い見せ方をしていくかという、情報のリサイクル性みたいなのがキーワードになってくるんじゃないかと思う。フォトモザイクなんかは3D表現ではないけれども、既にある画像をうまくリサイクルして面白く見せてる例だと思う。萌え系ゲームとかがこのへんの技術で一歩先を行っている感があるのは、アニメーションの元となる原画をどういう使い回し方をすればよりリッチな表現を演出できるか、ということをずっとやってきてるからだとおもう。


■レイヤーの三次元変形による疑似3D表現

VJ的なモーショングラフィックでたまに使われてたりするけど、単純に画像をパースをつけて歪ませていくことによって、奥行きを表現する手法もある。上記の二つの手法に比べるとより原始的な表現になるけど、演出によってはかなり気持ちいいものになる感じ。AfterEffectの三次元レイヤーを使ったりすると作れる。

asagi / dir.阿部慎吾
asagi.jpg

静止画をAfterEffectで構成することで擬似的に3Dに見せている。多分上記の手法を複雑に組み合わせたものだと思うけど、クオリティが今まで見た中でもトップクラス。ちなみに、この作品で多用されてる、画像のトランジション(切り替え)を流しコマを使いながらつなぐと、まるで画像の中をものすごい勢いで移動しているような映像に見える演出は、NorthKingdomの手がけたVodafone Future Visionの中でも多様されてて、いろいろ可能性を感じる手法の一つ。

この作品を見て思い出したのは、糸崎公朗氏による「フォトモ」。

フォトモ
fotomo.jpg

フォトグラフ+モデルという考え方は、まさに上記の手法をアナログで再現したものだと言える。第一回で紹介したImage Based Modeling and Renderingの考え方にも近いかも。3D表現技術の面白いところは、こういうアナログの手法ともちゃんと共鳴するところにもあるのかも。

次回は「Web3Dについて」と題して、Webでの様々な3D表現を俯瞰してみるよ。

■関連記事
SLN:blog*: SLN3DEXPO Vol.4 3次元にCGを合成する
SLN:blog*: SLN3DEXPO Vol.3 Web3Dについて
SLN:blog*: SLN3DEXPO Vol.1 2次元画像から3次元画像を生成する技術
SLN:blog*: アニメの話

Facebook Comments
Twitter Comments