新しい切り口の話




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本屋を歩いている時にたまたま出会う、Amazonでレコメンドされる、ブログで知る、人から勧められるなど、本との出会い方は色々。今日たまたま本をとある切り口で紹介しているtumblrを見てなるほど、と思うことがあったのでメモ。

I don't know.
http://silonil.tumblr.com/

様々な本の冒頭や終わりに記されている謝辞だけをひたすら紹介しているtumblr。誰かもわからない「実も心もドラッグに浸りきって、あっちの世界へ行ってしまったニック」に捧げられた本はどんな本なのだろう、「烏山に、調布に、そして清水」に捧げられている本は?たった1行か2行の言葉だけれどもそのテキストの後ろには著者の人生を感じさせる大きなストーリーが横たわっている。もしかしたら本のタイトルや、本の内容そのものよりも興味をくすぐられる面白い本の紹介方法だ。

もう一つ、面白い本の紹介の仕方は、以前紀伊国屋新宿本店が展開していた「ほんのまくらフェア」というもので、これはタイトルも表紙もすべてかくして、本の出だしの文章=「まくら」だけが見える状態にして商品を陳列するというもの。これも、たった一行だけど、これからはじまる長いストーリーのはじまりがこの一行に圧縮されていると考えると想像力を刺激され、ふと本を手にとるきっかけになる面白い試みだ。

どれも本に限った話だけれども、これは音楽とか映画とかいろいろなモノを紹介する時に、著者や、監督や、役者や、ストーリーといったお決まりの紹介の仕方ではなく、紹介する作品の切り口の角度をちょっと変えてみるだけで、驚くような断面が表れるという良い例だと思う。

切り口を用意するということは、本来複雑で豊かな形をもったものをある1つのアングルだけで切り取るという作業なわけだけど、今回紹介したようなものを見ていると、それは何か1点にフォーカスするというよりも、なにか一つ意外を削ぎ落とすことのほうが近い気がする。例えば真っ暗闇で食事をすると感覚が研ぎすまされて、匂いや、口に入れときの感触、味わいなどがより鮮明になる、みたいなこと。

こういう考え方は常に忘れないようにしたい。


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