最近3Dプリンターがブームですね。3Dデータをオンデマンドでプリントしてくれるサービスとか、3Dスキャン技術と組み合わせて自分のフィギュアをつくったり、エコーのデータを3Dデータに変換して生まれる前の子供を3Dプリンティングしたりとかいろんなサービスがでてきてる。基本的に現在の3Dプリンティング技術は、元となる3DデータをMRIみたいに千切りにして、その断面を樹脂などで積み重ねていくことによって立体構造をつくっていくというものなんだけれど、最近これとは全く違うアプローチで「3Dプリンティング」をしている事例が面白いなと思ったのでいくつかまとめて紹介。
蜂の蜜蝋を利用した3Dプリンティング「3-Bee Printing Project」
スコッチの大手ブランド、デュワーズが自社商品「Highlander Honey」にちなんで蜂蜜に関するプロモーションを行なっています。蜂蜜と言えば、蜂。8万匹もの蜂を使ってなんとも珍しい彫刻を作ったのです。その名もディワーズ3-Bプリンティングプロジェクト。作ったのは、Highlander Honeyのボトル。 まずは、ボトルの型をとります、ここで使ったのは専用のCADソフトウェア。ボトル型の表面は、蜂の巣にある六角形のテクスチャが入ります。テクスチャがガイドラインとなり、ここから蜂が巣を作りやすくする仕掛け。この型を透明のこれまたボトルに近い形をしたプラスティックケースの中に入れ、ケース内を蜂が自由に出入りできるようにします。そして、型の中に女王蜂を入れて、ここを新たな城として巣作りをスタートさせてもらいます。- Gizmode : 8万匹の蜂が作り出す、3Dプリンターならぬ3Bプリンター
太陽光と砂を利用した3Dプリンティング「Solar Sinter」
Markus Kayser - Solar Sinter Project from Markus Kayser on Vimeo.
将来訪れるであろうエネルギーと物質の不足問題を解決するには？ということで、サハラ砂漠にあふれる砂と太陽光の可能性に着目したのが「Solar Sinter Project」です。特殊な3Dプリンタを使用し、光をあてて砂を溶かし、複雑な立体物やおわんを作成します。- Gigazine : 太陽光で砂を溶かし立体物を作る3Dプリンタ「Solar Sinter」
こんな感じで、自然のそのもののふるまいを利用して、あらたな構造物やテクスチャーを生成する実験を多く手がけているのが、MIT Media LabのNeri Oxman率いるMediated Matterグループ。3Dプリンタや最新のテクノロジーを利用した新しい構造体や素材の開発／研究を通して、自然物と人工物の新たな関係性を探ることを目的としているらしい。今回紹介するSilk Pavillion以外にもいろいろ面白いプロジェクトを展開してる。
蚕を利用した3Dプリンティング「Silk Pavillion」
SILK PAVILION from Mediated Matter Group on Vimeo.
オックスマン氏は蚕を這わせるベースを作るために専用のCADプログラムを開発。その後、アルミニウム製のベースを制作し、これにCNCロボットで絹の糸を格子のパターンにかけていった。このベースは複数組み合わせられて多面体の構造体となり、MITのアトリウムに吊り下げられた。ここに放たれた数千頭もの蚕が、この構造体の表面を這いながら絹を産生することでパヴィリオンは完成した。- WIRED: 数千頭の蚕を操る、MITの幻想的「絹のドーム」
僕たちがディスプレイで見るテキストや絵や映像は、その裏側で膨大な格子状のピクセルのマトリクスのオンとオフ、色などを細かく調整して絵を描いている。ピクセルひとつひとつをコントロールするのと同様に、三次元空間上のあるユニット・・・例えばレゴブロックだったり、小さいビーズ上のものだったり、分子だったり、より高い解像度で自在にコントロールできるようになったら、三次元空間にあらゆる形を表現することができるようになるだろう。
こうした、人間が想定したデータを100%正確に三次元空間に再現する、という方向とは別に、上でとりあげたような既に自然が持っているモノを生成する仕組み（蜂や化学変化や蚕）を利用して生成すると、自然というフィルターを通して、想定外の形になったり、思わず「周辺環境に最適化された形」が出力されたりする。この自然の複雑性をあえて取り込むアプローチは、今の人間の技術では解決不可能な問題を解決する糸口をしめしてくれたり、人間の想像力を超えるようなものを生成しうるような気がして、未来を感じます。