レトロシミュレーショニズム




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60年代〜70年代中頃のデザインというのは、ミッドセンチュリーなんていわれるようにファン層が多かったりして、デザイントレンド的にも再帰率の高い時期だと思うんですけど、一方70年代後半〜80年代ってまだ、ある種のトレンドとして観測できるまでにはリバイバルっぽい動きって無い感じがするなあと思ってた。で、最近その時期のトレンディーなペラペラした感じだとか、ニューウェーブの無駄にとんがった感じとか、子供向けのテレビ番組のテイストを踏襲したものが、ここ数年の音楽側の80sリバイバルに呼応する形でよく見るなと感じていて、かつそれが一種のスタイルとして完成されつつあるな、と思ったので適当にまとめてみた。

ファンタジスタ歌磨呂によるDorianの一連のPVはかなりシミュレーションレベルが高くて素敵です。いわゆる「あるある」を積み重ねていった結果独特の質感に到達していてすごい。

そういえば、同じようなアングルで最近びっくりしたのが、pixivでイラスト公開しているこの方、80年代の漫画の雰囲気を忠実にシミュレートしつつも、独自の境地に到達しちゃってる。詳細は不明なんだけど、なんでも平成生まれだとか。

そういえば初音ミクが出た当時、ボコーダー的な手触りがYMOの楽曲との親和性が高いよねって話があって、YMO周りのパロディーが多くつくられててどれも面白かった。(オリジナルはもちろんこれ。大友克洋のイラストやっぱりかっこいいなあ)

このビデオを手がけているAC部はアニメOPとか、トレンディドラマOPとか、怪しいニューエイジビデオとかのシミュレーションで定評があって、group_inou の「Heart」も、当時の小学生がブラウン管越しに見ていた風景を再現してトラウマをくすぐる感じがすごい。アニメのOP、EDをモチーフにしたCMやPVは他にも色々あって、例えば...

あと、そういえばALSOKのCMは、昔のヒーロー戦隊モノの映像の質感や編集の特徴、特殊効果の質感を忠実に再現していて、これは素晴らしい仕事をしているなあ、と思った。

で、こういうのって、日本以外だとどうなの?って思った時に思い出したのがこれ。

完全にP-Funkのシミュレーションなんだけど、忠実すぎて見分けが付かないレベル。最初の冒頭のVHSのノイズや「PLAY」とかすごくいい。今思えばP-Funkはしっかりアニメもやってたのか...

上のSnoop DoggのがVHSだとすると、JusticeのこっちのPVはレーザーディスクだよね。元ネタはもちろんロバート・エイブル
とかこのあたりだと思うけど、これをPVにしようというセンスが本当にすごい...

この時期の、特に合成とかCGに挑戦している映像って、技術的にまだまだ過渡期で、表現力としては、今見ちゃうと、ちょっと稚拙に映っちゃうところがあったんだと思うんですよね。ただ、それがある種の「味わい」になっていた部分がある。編集技術の向上でその稚拙さ〜味わいは急速に失われていくのだけど、最近になって表現の解像度があがっていった末に、その解像度をもって過去の稚拙さをシミュレートしていこうという動きが出てきているのがなんだか面白い。

それは往年のビンテージシンセのシミュレーションがソフトウェア上で忠実にできるようになって以降、80sっぽい音作りやレトロフューチュアルなモチーフが目立つようになってきたこととも密接に関連があると考えているのだけど、その話はまた別の機会に...


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