アウトサイダー・ウェブデザイン




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「アウトサイダー・ウェブデザイン」あるいは「ロードサイド・ウェブデザイン」。トレンドからは大きく外れた、デザイナーとは異なる文法によって構築されたいくつかのウェブサイトを、多大なリスペクトとともにいくつか集めてみた。どのサイトも、まるで「野菜炒め頼んだらおまけに餃子ととんかつとフルーツパフェ(しかもおかわり自由)がついてくるサービス定食」みたいな、「過剰なおもてなし感」で満ち溢れている。その過剰なデザインの後ろには、我々が見落としてしまったたくさんのヒントや、別の進化の方向性が隠されているような気がする。

アウトサイダー・アート(英: outsider art)とは、特に芸術の伝統的な訓練を受けていなくて、名声を目指すでもなく、既成の芸術の流派や傾向・モードに一切とらわれることなく自然に表現したという作品のことをいう。 フランスの画家ジャン・デュビュッフェがつくったフランス語「アール・ブリュット(Art Brut、「生(なま、き)の芸術」)」を、イギリスの著述家ロジャー・カーディナルが英語表現に訳し替えたものである。 - wikipedia 「アウトサイダー・アート

肉の田じま
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ジャギーだらけのデザインエレメントにグラデーションの多用など「それっぽい」要素が満載。僕がこのサイトで度肝をぬかれたのがスプラッシュページの挙動。マウスオーバーでいきなり画面遷移!「使いやすさが大切?じゃあクリックせずに開くようにすれば楽ちんよね。そうよ、そうに違いないわ。」なんて声が聞こえてきそうな悪気ゼロ設計。こういうのは「ユーザビリティ」とか「ユーザーフレンドリー」とは別の言葉を開発したい。おばあちゃんの家にいくとたくさんお菓子をくれるような過剰なもてなし感というか・・・「おばあちゃビリティ」?全然狙ってないはずなのにいわゆる「狂気系Flash」として一部で有名なLarry Carlsonのアシッド感覚に通じるものを感じる。


愛生会
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アウトサイダー・ウェブデザイン会の金字塔。愛生会病院。狙ってるのか狙っていないのか微妙なラインがすごい。画面の各要素がせわしなく動く様がネオンサインのよう。「アンチエイリアスなんかで丸まってたまるかよ、俺はいつだってカリッカリだぜ」って感じの文字の処理が相当ロックだ。100人に見せたら大体100人の人が「ああ、こりゃすげえな」と反応する。それってすごいエネルギーですよ。


愛の妖精ぷりんてぃん
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アウトサイダー・ウェブデザインとデコカルチャーはかなり近い位置に存在していることがわかる。QVGA(320*240)の領域でのおもてなしマインドがXGA(1024*768)に拡張されるとこうなる。もしかしたらウェブ・デザインの未来かも。


激安 格安 爆安 ホームページ制作屋
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本気なのかジョークなのか確認できなかったけど、メタタグに何故か安達裕美が入ってるのは分かった。


胡散臭いデザイン、集めました
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文字通り「胡散臭い」情報商材のページなどのデザインを集めたサイト。これだけ資料があれば一つのスタイルとして体系化することができそうだ。どうもトルマリンブレスの広告グラフィックあたりがルーツのような気がする。マンションチラシなんかもそうだけど、いっぱいいっぱいまで詰め込む幕の内弁当感覚がすごい。


これらのアウトサイダー・ウェブデザインは、近年のウェブ制作ツールの進化とともに姿を消しつつあるが、一部の好事家によって分析のメスがいれられ、一つのスタイルとして確立されつつもある。以下の二つのサイトはそれらのスタイルを模倣したジョーク。


SUBPOP
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老舗レーベルSUBPOPのサンプラー配布ページ。海外だとComic Sansを使うのがオシャレ。


へてむる
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レンタルサーバhetemlのエイプリルフール用のサイト。コンテンツが細部までちゃんとつくりこんであるのと、ソースをみるとポエムが載ってるところとか、本当に芸が細かくて愛を感じる。レンタルサーバ屋さんがこれをやる、というところがちゃんとおちてて素敵だ。


みんなの味方有吉弘行のホームページ
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ソースが綺麗すぎる。高度なことをやってすごいダサいページを実装してるってのが超絶アクロバット。


この記事をかきながら、ふとMingaring Mikeのことを思い出した。この人は「段ボールでつくった架空のレコード」を100枚以上リリースし続けた人で、レコードマニアの間で話題になっていたのが、近年アウトサイダーアートの文脈で再発見されたっていう数奇な人なんだけど、「自分のウェブサイトを持つ」ということは、Mingering Mikeの「自分のレコードを描く」という行為に根っこの部分で近いような気がする。うれしくって、最高にイキって、過剰なくらいおもてなししちゃう感じ。それって結果ぶっ飛んでるんだけど、どこか愛おしい感じもあったりして。ぼくらはつい、格好をつけて、こういう「うれしくって、最高にイキって、過剰なくらいおもてなししちゃう感じ。」、あるいはモノづくりを初期衝動っていうものを忘れがちだよなあ。


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5 俺らのアウトサイダーアート!
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