ツマミとインタラクション




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先日DOMMUNEでFrank Muller (Beroshima)のライブを見てたら、ラップトップにつないだMASCHINEとTR-707(!)を同期させていて、リアルタイムにシンバルの音をフェードインフェードアウトさせたり、リズムを分解したりしていて、相当格好よかった!

TR-707ってスッカスカで、あえてユルさを出すときに使うような「ポンチ系」のドラム音源っていうイメージがあったんだけど、使い方によってこんな格好よくなるのか、いやむしろこのスカスカ具合がすごいテクノっぽくてかっこいい!というわけで、すっかりボタンやツマミがたくさんついたハード機材が欲しくなってしまった。やっぱりハードはいいなあ。


ツマミの魅力というのは「だいたい」を許容してくれるところだ。数値だと厳密に入力しなくてはいけないものを、手をクイッとひねるだけでパラメーターをかえることができる。大きくパラメーターを変えたいときは力をこめてひねればいいし、少しだけ変えたいときは指で、まさにつまむ感じで少しづつひねっていけばいい。直観的。ほとんどのUIがポインティングデバイスとタッチパネルに収束してしまいそうな昨今、この「ツマミ」というインターフェイスを再評価すべきなんじゃないかと感じている。


例えば昔のラジオって大きなノブをくるくるまわしながらチューニングしてたえど、あの「電波を捕まえる感じ」が好きっていう人、結構多いんじゃないかなあ。ボタンを押したら局がカチッと切り替わるのは、確かに便利なんだけど、なんというか、趣がない。声が、音楽が、電波にのって空気の中をただよっていて、その電波をツマミをまわして捕まえるっていうのが少しロマンチックだなあと思ってた。しかも、ちょっと電波の悪いところでどうしても聴きたいラジオがある時なんかは、音がよく聞こえる方角をラジオをもってうろうろして探したり、アンテナを握っていろんなポーズとってみたりするでしょ。これってすごく面白いインタラクションだと思うんですよ。全国の人が電波塔に向かってアンテナたててたわけでしょう?メッカに向かってお祈りするみたいに。今はどこにいてもだいたい電波があって、「あっちにいくとちょっと電波入る!」みたいなことも少なくなってきたと思うんだけど、例えばiPhoneのコンパスセンサなんかを使って、特定の方角を向かないとチューニングできないコンテンツとかあったら今、逆に面白いと思う。そうえいば、ツマミデバイスとRadikoでこれを実現している人がいて素敵だ!(→radiko-tune と PowerMate で radiko を不便に聴こう

そうそう、このインタラクションをうまく利用したのが、ジョブスがキーノートで披露して有名になった、ジョブスとウォズの学生時代のテレビのいたずら。

ジョブズが高校生の頃、スティーブ・ウォズニアックと一緒につるんでよくイタズラをした。当時、カリフォルニア大学バークレー校の学生だったウォズニアックが『TV Jammer』という機械を発明したのだ。

これはボタンを押すと障害電波が発生し、周囲にあるテレビが見えなくなるという代物。ジョブズとウォズニアックの2人は、バークレー校の学生寮でテレビを楽しむ学生を見かけると、よくこの装置を使って電波を妨害していたのだ。

まずはTV Jammerで妨害電波を発生させる。学生が映像を直そうとテレビに近づき、何かの拍子に片足を上げたタイミングを見計らってTV Jammerを解除。一時的にテレビを見られる状態にするが、その学生が再び足を下ろすと画面を乱す。

これを繰り返して学生に「片足を上げたままだと映像が乱れない」ということを思い込ませて、ジョブズが基調講演の壇上で取ってみせたような変なポーズをさせたのだ。
- あのジョブズが「シェー」!? 謎のポーズの秘密を明かす http://ascii.jp/elem/000/000/011/11768/

賢いよね。このへんの話はウォズに自伝に詳しくかいてあって、すごく面白かった。この本はオススメ。


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この間たまたま見つけて面白いなあと思ったんだけど、無印良品のキッチンタイマーには実は型番が2種類あるんだよね。1つは定番のデジタル表示+ボタンのもの(→キッチンタイマーTD-387)。もう1つは、タイマー自体がダイアル構造になっていて、ひねることでタイマーの設定自体を操作できるダイアル式(→ダイヤル式キッチンタイマーTD-393)。この二つの商品の違いは考えてみると面白くて、前者はボタンをカチカチ押して、細かい時間を設定するときとかに便利だと思うんだけど、長い時間を設定するには、ボタンを押し続けなければいけない分ユーザの負荷が大きい。一方ダイアル式は、細かい時間を設定するにはコツがいるけど、長い時間を設定するにはおおきくひねるだけなのでユーザーの負荷が少ない。一番大きいのは、「3分だったらこのくらいひねる」「10分だったらこのくらいひねる」という「だいたいの感覚」を身体に覚えさせることができるのはダイアルならではだと思う。


だから、dsLabsタッチパネルの上にツマミをおいて操作するというアイデアはすごく未来を感じた!仕組みとしてはすごく単純で、手の静電気をノブの反対側に伝えているだけ。タッチインターフェイスの未来はこっちなんじゃないか、という気がする。dsLabsは、ほかにも布を使ったソフトスタイラスをつくる実験などもしていて、タッチインターフェイスに対してオルタナティブなアプローチをしていて面白い。

Physical Touchscreen Knob from adam kumpf on Vimeo.


ちなみに、今回の画像はAphex TwinことRichard.D.Jamesとμ-ziqことMike Paradinasの脱力系コラボMIKE&RICH『Expert Knob Twiddlers』(直訳:ツマミいじりのエキスパートたち 邦題:ゲームのたつじん)のジャケより。ツマミの話にこれほどぴったりな画像はないでしょう!THE ツマミストの肖像。


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