ウィルヘルムスクリームとブレイクビーツの話




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おそらく、世界で一番有名な叫び声:ウィルヘルムスクリーム。もともとは1951年の西部劇「遠い太鼓」の兵士がワニに噛まれるというシーン用に録音された音声の中のアウトテイクで、1970年に入ってBen Burttというサウンドデザイナーがたまたまこの音源のマスターを発見する。後に、彼がSEを手がけた「スターウォーズ」や「インディージョーンズ」のすべての作品の中で(半ばジョークとして)挿入されたこの叫び声は、その特徴的な響きからハリウッドのSE業界の中で「ウィルヘルムスクリーム」と呼ばれ、半世紀以上経った今でもある種の伝統として使われ続けているんだとか。



The Wilhelm Scream Compilation



History of the Wilhelm Scream



さて、この話で思い出したのが「ブレイクビーツ」のお話。ヒップホップからはじまり、90年代後半にはビックビートやドラムンベースという新しいジャンルのベースとなる思想で、主に曲間の「ブレイク」とよばれるドラムのソロ部分をサンプリングして曲を再構成するというもの。これを発明したのがDJ Kool Hercというジャマイカ出身のDJで、ヒップホップの生みの親の一人とも言われる人物。(ちなみにB-Boyって言葉は「ブレイクをかけると踊りだすやつら」(Break-Boy)って意味でKool Hercが言い始めたらしい)

ブレイクビーツとして定番になっているネタはいくつかあって、たとえばこんな感じ。おそらく断片的に「あれ、これってあの曲?」という引っかかりどころがある人もいるかも。


Funky Drummer / James Brown



Think (About It) / Lyn Collins

有名なフレーズは1:25付近からの4小節。



Apache / Incredible Bong Band



Amen, Brother / The Winstons

有名なフレーズは1:25付近からの8小節。



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数あるネタの中でも特にThe WinstonsのAmen, Brotherのブレイクは別格で、このブレイクを通じて、ただループして使うのではなくて、細かいフレーズに細切れにして再構成するというテクニックが発明され、ジャングル~ドラムベースと呼ばれる音楽が生まれることになる。このブレイクにも「ウィルヘルムスクリーム」みたいな感じで「アーメンブレイク」っていう名前が付いている。当時この曲自体はB面で、当時大ヒットしたわけでも何でもないっていうのも面白いよね。

ちょっとトンデモ感が漂うけど、実はこのAmen Beatsは黄金律でできていているというレポートもあって、ますます神がかったブレイクだなあという感じ。

このAmen Breakについてのオーディオ・ドキュメンタリーを2004年にNate Harrisonというアーティストが"Can I get an Amen?"というインスタレーション作品として発表していて、これが抜群に面白い。音楽の文脈と著作権の文脈二つの視点からのドキュメンタリーになっていてる。この映像を見ると、ブレイクビーツの面白さがよくわかると思う。


Video explains the world's most important 6-sec drum loop



今回は、先日たまたまお酒の席でディズニーのアニメーションにはテンプレートがあるという話が出て、その時にちらりとウィルヘルムスクリームの話をしたので、せっかくなので記事に書いてみた。様式の歴史というか、ミームというか、こういうの好きなんだよなあ。

Disney's Templates



で、僕が個人的に次のAmen Breaksになるポテンシャルを秘めているなと勝手に期待してるネタはズバリこれ(嘘)



Mantronixもビックリのローファイ・ハードコア・ブレイク!!! モーターの音もインダストリアルな雰囲気。これ、サーキットベンドしたもんでもなんでもなく最初からコレってのがヤバいよね。

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