Point of View Point




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ゲームのグラフィックにビシバシ琴線をかき鳴らされてて育ったからなのか、自分が好きなものを見回してみると、「特定のビューポイントからずっと撮られている」ような作品が好きだということに気づいた。俯瞰、水平、アイソメ(クオータービュー)という切り口で好きなものを様々な分野から羅列してみた。


■俯瞰

Powers of Ten

俯瞰といえばこれ。イームズ夫妻による映像史に残る最高傑作。10の25乗からマイナス16乗を俯瞰で行き来するハイパートリップ。中学生の時に科学の時間にこれを見て、世界の捉え方がガラッと変わるぐらいの衝撃を受けた。

EAMES FILMS:チャールズ&レイ・イームズの映像世界
パイオニアLDC (2001-08-24)
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おすすめ度の平均: 4.0
1 入門編としてはハードルが高すぎました
4 次回はぜひ多くの作品の収録を
4 映像デザインの傑作と、デザインのための映像
5 イームズの違った側面を垣間見る事のできる1本。
4 アトリエの雑貨が必見!

Supervisions / Andreas Gefeller
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ドイツの写真家、Andreas Gefellerによる俯瞰で撮影した写真を大量に合成して大きな俯瞰画像をつくってしまうGoogle Map的視点でつくられたデジタル写真のシリーズ。SUPERVISIONSという同名の作品集が出てます。ページを開いたときに背筋がゾワッとしたのをよく覚えてる。ちなみに上の写真、何だかわかります?これは実はゴルフ場のグリーンに転がった大量のゴルフボールを俯瞰で撮影したもの。こういうちょっとおかしい写真がたくさんあって楽しい。後述のAndreas Gurskyにしてもそうだけど、基本的にドイツ写真のひんやりとした空気が好き。

Supervisions
Supervisions
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Andreas Gefeller
Cantz
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Georg Gerster
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一方スイスの写真家。いわゆる航空写真なのだけど、ものすごくグラフィック的に地表を切り取っていて印象的。Google Mapで遊んでいる人なら分かるかもしれない、規則正しく並ぶ耕作地帯の美しさ、埠頭の構成主義っぽいコンポジション、ゴルフ場が密集しているエリアの虫食いみたいでぞわぞわする...あの感じ。Georg Gersterの航空写真は1975年から20年に渡ってSwiss Airのポスターに採用されており、それがまとまったSwissair Postersという本も出ていて、これもステキ。

Georg Gerster: Swissair Posters
Georg Gerster
Schirmer/Mosel Verlag Gmbh
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Fantastic Plastic Machine - don't you know / Dir.GROOVISIONS

はい、グルビ。たぶんGROOVISIONSのなかのひとはきっと僕とおなじで俯瞰とかアイソメが大好きなんだと思う。後でも紹介するニコニコで話題になったhalfbyのPVとかね。同様に、俯瞰の視点からつくられた映像作品としては、GRV1778っていう20分間延々車が道路を走っていく様子を俯瞰で追いかけるマニアックなDVDも出ているので俯瞰フェチの方はぜひ。

GRV1778
GRV1778
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ナウオンメディア (2002-10-30)
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おすすめ度の平均: 3.5
5 BGMはYukihiro Fukutomi
3 インテリアとして
3 発想はいいのだけど・・・

ちなみにGRV1778をスクリーンセーバー化したものがここからダウンロードできる。やっぱりフレームレートの問題もあって、映像のスムーズさでいうともちろんDVDのほうが綺麗なんだけど、楽しい。車庫入れのところなんかかなりよくできてて面白いです。


Hello World, Softbank
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縦スクロールシューティングゲーム風俯瞰インターフェイス。こういう絵、なんか落ち着くのはゲームのトラウマのせいだよねw。こういう「企業の取り組み」的なコンテンツって普通に見せるだけだと絶対読まれないから、こういう楽しい見せ方+いろんな情報を流しそうめん式に見せてあげるインターフェイスってのは正しいなと思う。その考え方をものすごくシンプルに考えるとタイポグラフィとサムネがフワフワしてるようなインターフェイスをつくっちゃうんだろうけど、そこはさすが、センスと技術力の勝利って感じ。


■水平

Michael Wolf
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Architecture of Densityシリーズの圧倒的な密度。The Transparent Cityの、ビル群を真横から撮影した時の例えようも無いひんやり感。ちなみにTransparent Cityのシリーズの窓の中をさらに引き延ばした Transparent City Detailという悪趣味な作品もあって楽しい。これはPowers Of Tenの考え方にも似てるかも。


この視点の移動する感じはMichel Gondryの撮ったMassive AttackのProtectionのPVや、

Protection - Massive Attack / Dir. Michel Gondry


ちょっと前に話題になったこのサイトを思い出すなあ。(カンヌでPromo Lionグランプリだってさ)

HBO Voyeur
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Andreas Gursky
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ドイツ写真重鎮。とにかく執念すら感じるコンポジションへのこだわりがかっこいい。真横からライン川を撮った写真はあまりにも有名。ベッヒャー夫妻の弟子で云々...て、このへんちゃんと勉強したら面白そうだなあ。やっぱり数年前に写美でやってたドイツ写真展行っとけばよかったよ。

Andreas Gursky
Andreas Gursky
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5 ボス、ブリューゲル、グランマ・モーゼスの孫か
4 とてもとても"美しい"写真

住宅都市整理公団
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DESIGN QUATERLYに連載されていて、とにかく気になっていた住宅都市整理公団による「団地の見究」が本になってた。上記のベッヒャー夫妻の提唱した「タイポロジー」の視点に近いのかもしれない。真横から団地を見たときのグリッド感、ミニチュア感、形態としてのかっこよさ、どれをとってもしびれます。この記事によると、どうしても横から撮影できないものはたくさん撮影した写真をstitcherでつなげて水平に修正しているらしい。すばらしいなあ。多分上で紹介したAndreas Geffeler氏も同じ手法で俯瞰をつくってるんだと思う。

団地の見究
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4 カタログ風に団地を見る
5 おもしろ解説でおもわず高層団地ファンに

やっぱり真横からの水平アングルで興奮するポイントはグリッド感かも。だからこそビルとか団地とかユニットの積み重ねで構築されたモダン建築を横から撮ったときがかっこよく感じるのだろう。


映像に関しては、まだあまり考え方がまとまっていないのだけど、水平横スクロールが面白いのかな。上記の写真のようなものとはまた違った面白さことはないのだけど、例えばDown by Lawの墓場からヌラーっとした横スクロールのオープニングとか。最初見たときすごい違和感あったな。

Down By Law Opening / Dir. Jim Jurmush


水平アングルじゃないけど、横スクロールってことでMichel GondryのStar GuitarのPVは定番なので一応張っておこう。

Star Guitar - The Chemical Brothers / Dir. Michel Gondry


あとは、ハイスピード+横スクロールっていう水平アングル好きで、かつハイスピードも大好きって人にとってはツボすぎる作品もある。監督は島田大介。

STONE COLD BREAK - 10 Feet / Dir. Daisuke Shimada


■アイソメトリック/クオータービュー

ポピュラス

クオータービューといえばどうしても洋ゲーのイメージが強くて、これが宗教観の違いだとしたらすごく面白いな。


シムシティは一番最初は俯瞰視点だったけど、Sim City2000になってからいきなりクオータービューになって、ツボをつかれまくり。

Sim City2000


昔Spindizzy Worldsっていうあやしーい地味な洋ゲーがあったんだけど、知ってる人いるかなあ。これも好きだった。

Spindizzy Worlds


ゲームのクオータービューについてはこちらのページの考察が面白い。

見下ろしで立体的なこの視点は、強烈な箱庭感がある。箱庭感とは、立体による「現実感」と同時に、上空から見た事による「客観性」を同時に持つ感覚。それは、模型感覚、ジオラマ感覚、人形遊び感覚、と言ってもいいかもしれない。

というのは、ものすごく納得。クオータービューで面白いのは、やっぱりこの「箱庭感」だと思う。そうそう、箱庭感といえばJosh Keyesのイラストも素敵だ。

Josh Keyes
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あとは、ニコニコ動画で話題になった「中曽根ティーチャー」ことHALFBYの一連のPVもクオータービュー。これもGROOVISIONS作品だ。そういえば今回グルビだらけだな...まあいいか。

HALFBEAT - HALFBY / Dir.GROOVISIONS

Rodeo Machine - HALFBY / Dir. GROOVISIONS

SCREW THE PLAN - HALFBY / Dir.GROOVIONS

Slip On - HALFBY / Dir.GROOVISIONS

GRV2283、GRV2284
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4 ニコニコ動画から来た人へ
4 行進〜伝染

いろいろな作品をざっと眺めてみて思うのは、例えば彫刻を見るときって彫刻のまわりをぐるっとまわって形態が変わっていく様子を楽しむよね。だけど、俯瞰とか真横とかクオータービューとか、視点が特定のルールで固定されたものをみるとき、彫刻のような三次元的な空間の捉え方ができなくて、対象が限りなく平面的にとらえられている。こういう、二次元と三次元の中間にぶらさがっている感じが面白いんだと思う。

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