
この世はもうじきお終いだ 俺たちゃ毎晩お祭りだ『マリリン・モンロー・ノー・リターン』野坂昭如
結んで開いて蓮の花
なんだらなんだら朝ぼらけ
マリリン・モンロー・ノー・リターン
大学生の時、吉祥寺かどこかの小さいクラブだったと思う。確か知り合いのパーティーで、明け方にいきなり野坂昭如の「マリリン・モンロー・ノーリターン」がインサートされた。その頃って社会学者とか、ネットでも、今で言えば例えばはてな村民みたいな人たちがレイヴカルチャーについて色々語るのがオツ、みたいな時期があって、そんな中の一つに、レイヴカルチャーって現代版の「ええじゃないか」なんじゃね?みたいな話があったことを、僕はこの曲を聴きながらぼんやりと思い出したのでした。
最近になってふと思い出して、muxtapeの音源を聴いてみたり、CDを探して聴いてみたら、かなりカッコよかったので、そのことを少し書いておこうと思う。
野坂昭如というと、「火垂るの墓」の作者で「おもちゃのチャチャチャ」の作詞家で、ちょっと前はバラエティ番組で時々見かける変わったじいさんという印象だったのだけど、色々調べてみると、かなりめちゃくちゃな人のようで面白い。(詳しい話はwikipediaやこちらのページのエピソードが面白い)ハトヤのCMソングもこの人だったのか....
このCMかっこいいなあ。最後の「ドボゥドボゥドボゥ」ってボトルのシズルSEが、今では考えられないぐらい荒っぽくてかっこいい。
で、聴いてみた音源はこれ
Pヴァインレコード (1999-08-25)
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Pヴァインレコード (2000-10-10)
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バップ (2006-10-25)
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結論からいうと、これは、すごくカッコイイ。
いわゆる歌謡曲の体裁なんだけど、歌詞が不穏というか、この不穏さこそが、もしかしたらものすごく世相を表しているとしたら逆にポップなんじゃないかと思わせるような、ちょっと価値観がひっくりかえる感じがあった。
僕が一番好きなのは「十人の女学生」。十人の女学生が一人ずつ死んだり気が狂ったりひとりづつ減っていくというお話。曲もかなりかっこいい。この曲を聴きながら思い出したのが、エドワード・ゴーリーの「ギャシュリークラムのちびっ子たち」という絵本で。ABC順に韻を踏みながらテンポ良く子供たちが死んでいくという不穏な絵本なんだけど、子供や女学生がバッタバタと死んでいくという話には、独特の美しさがある気がする。
河出書房新社
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他の曲も冴えまくってる。
どんな人間にも 必ず終わりは来る終末のタンゴ
どんな世の中にも 必ず終わりは来る
美しい人も 勇ましい人も 抜け目ない人も
いつかはくたばる
その日のために鍛えておこう 君の覚悟のすべてを
自殺、他殺、虐殺!!
春は夏に犯されて花ざかりの森
夏は秋に殺される
秋はひとりで老いぼれて
冬がみんなを埋める。
多分自分は、曲自体はものすごくポップにつくってあるのに、歌詞は異様に不穏という違和感が好きなんだな。SPANK HAPPY(ではなく菊地成孔 feat.岩澤瞳名義)の「普通の恋」も同じ切り口で紹介できるかも。リストカッターの男の子とチョコレート中毒の女の子がコンビニで恋に落ちるという唄で、、、と、これだけでみぞおちあたりにズドーンとくるんだけど、これもまた歌詞が秀逸。
彼は世界を 毎日毎日毎日 呪い続けていたの普通の恋
11歳でドストエフスキー 15歳でエヴァンゲリオン
最悪のコースに溺れていたの
ハンパに高いIQがいつでもいつでも邪魔になって
革命ばかりを夢見るけれども 何もできない
悶々として暮らすうちにいつの間にか憶えたことは
自分の手首をちょっと切ること
たった一度だけ恋をしたこともあったけどそれは
ファーストキスの夜に考えられ得る最悪の結末を迎えた
女なんて
そう僕にはカッターナイフが必要 カッターナイフが必要
自分を切り裂く為に
こんな歌詞があまったるいトラックの上でシレッと歌われる。おかしい。10代の時にこの曲に出会っていたらどうなっていただろう?
compactsounds (2004-01-28)
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