Webキャンペーンのしかけ方。




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Webキャンペーンのしかけ方。 広告のプロたちがつくる“つぎのネット広告”

献本いただきましたので、ご紹介。(かい沢さまありがとうございますー)

タイトルの通り、Web広告の第一線で活躍する広告のプロの方々の考えている事やノウハウがまとめられた本。Web制作にまつわる本というのは、大体が技術的な側面や、デザインに焦点が当てられたものが多く、広告としてのプランニングというところに焦点があたった本は、なかなか無かったように思う。でも考えてみれば、いままでこういう本が無かったというのが、すごい事だ。これはウェブに携わる人はひとまず読んどいたほうがいいかもしれない。パラパラとやりながら気になったところを読むだけでもいいかもしれない。ちょっと違う見え方ができるようになるかも。

僕自身、Web広告についてアレコレ考えてごはんを食べてる人なので、日頃ウンウン考えているような事について、第一線で活躍されている先輩の皆様の頭の中が覗けて、刺激的な内容だと思ったけれど、それ以上に、ウェブというものについてもう一度考えるヒントがこの本には、ちりばめられていて、面白かったス。以下、この本を読んで考えたことをメモ感覚で雑雑と書いておく。

この本の中で、一番膝をたたきまくって赤く腫れた箇所。
 従来のWebコンテンツ制作では、「どのように情報を見せるか」というレベルまでしか考えられていなかった。
 つまり、「どのようなコミュニケーションをつくり上げるのか」という視点が欠如していたのである。
 コンテンツ内にどのような情報を配置するのかについては考えても、配置された情報自体がどう編集されるかについては、意識されていなかったのだ。
 90年代末から現在に至るまで、Webコンテンツ制作の「情報デザイン」や「ユーザビリティ」という側面について、多くの議論がなされてきた。「情報デザイン」という言葉だけを聞くと、ユーザーに対してのコミュニケーションデザインがずいぶん検討されてきたかのように感じられるが、結局のところ語られてきたのは、カタログアーカイブから情報をわかりやすく取り出すことができる構造をいかにつくるか、ということだった。
 つまり、置かれている情報にたどり着くまでのアプローチの話に終止していて、Webコンテンツの制作によって「どんな目的を達成したいのか」「閲覧するユーザとのあいだに、どのような関係性を築き上げたいのか」というもっとも大切であるはずの視点が欠如していたのだ。

- Chapter 3-1 「Webがになうべきコミュニケーション機能の変化」

そもそもデザインというのは、表層だけの問題ではないのは大前提だけど、ユーザビリティ云々の議論って、すごく大事なんだけど、それが目的ではない。そこからひいてみると「何を伝えるか」という事が見えてくる。「何を」「どのように」伝えるか。この本では、「コミュニケーションプランニング」という言葉が使われているけれども、これって別に新しいことでもなんでもなくて、これこそ「デザイン」というものの本質のように思う。優れたデザインというものは、何かを強制するという事が無い。行動の中に当たり前のようにとけ込んで馴染む。周到に「デザイン」された広告、というのは、おそらく透明な存在で、無意識のうちにスッと入ってくるようなものだと思う。

Webの世界に建築出身の人がすごく多いというのは、僕は偶然ではないと思う。情報と、時間軸と、奥行きがある時、それはもう、建築の世界なんじゃないだろうか。ウェブをつくる、ということは、情報の彫刻=経験をデザインするということで、それはまた建築も然り。そう、Webは経験するメディアだ。空間は無限にある。何でも盛り込める。でも、だからといって何でも盛り込むのはスマートじゃない。重要になってくるのは、何を出して何を出さないか、という判断なんだと思う。時には情報を削る事も必要だ。真っ暗闇の中にじっとしていると、いつもよりも感覚が研ぎすまされていくのと同じで。暗闇でオレンジジュースを飲んだらどんな味がするだろう?そんな想像力。

かのピクサーにジョン・ラセターという天才アニメーターがいて、ある時アニメ映画制作の裁量権を与えるという魅力的な条件でディズニーに誘われたんだけど、3DCGを使ったアニメづくりに熱中していたラセターは、ディズニーに対してこんなことを言って断ったそうな。
「ディズニーでも映画はつくれる。でもピクサーなら歴史がつくれる。」
ある意味Web広告というのは、アニメ業界にとって3DCGがそうだったように、広告業界にとってはまだまだこれからの世界なんだろうなと。だからこそ、僕はこの名言を時々かみしめつつ、明日もお仕事をがんばろうとか思ったり思わなかったり。

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